壊れていないWi-Fiルーター、いつ買い替える?AI時代でも「年数」よりEOLを見る

「Wi-Fiルーターは何年使ったら買い替えるべき?」と聞かれると、3年・5年といった年数で答えたくなります。
でも仕事用の回線なら、見るべき順番は逆です。
何年使ったかより、メーカーのサポートが続いているか。最新ファームウェアを受け取れるか。既知の重大な問題があるか。
AIによってソフトウェア上の問題を見つける能力は上がっています。一方で、公開された問題のすべてがすぐ悪用されるわけではありません。だから「古いから危険」と不安を煽るより、セキュリティ上の寿命が来たルーターを見分ける方が実用的です。
AI時代でも「古い=危険」ではない
注意
- AIで脆弱性発見能力は上昇
- 2026年1〜8月の実悪用観測は141件
- 全公開脆弱性の実悪用観測は0.23%
- 交換判断はEOL・更新可否・実悪用を優先

Google Threat Intelligence Group(GTIG)は、2026年1〜8月に実悪用が確認された公開済み脆弱性を141件観測し、月平均は2025年の10.5件から2026年は18件へ増えたと報告しています。
ただし、同じ報告では2026年に公開された脆弱性のうち実悪用が観測された割合は0.23%です。
つまり、AIによって攻撃側の能力が上がっていることと、「問題が見つかった機器は全部すぐ危険」という話は別です。個人事業主が見るべきなのは、怖さではなく優先順位です。
出典: Google GTIG
本当に怖いのはEOL後に修正が止まること

EOL(End of Life)=メーカーのサポート終了、という意味です。重要なのは古いからではなく、新しい問題が見つかっても修正版が出ない可能性が高くなることです。
FBIは2025年、サポート終了した家庭用ルーターが侵害され、犯罪用プロキシとして悪用されていると警告しました。特に外部から管理できる設定が有効な機器を問題視し、EOL機器の交換を推奨しています。
CISAのKnown Exploited Vulnerabilities(KEV)カタログにも、サポート終了済みルーターで実悪用が確認された脆弱性が複数掲載されています。ここで重要なのは「古い機種」というラベルではなく、修正できない機器に実悪用済みの問題が残ることです。
自宅兼事務所で同じLANに業務PC、スマホ、NAS、クラウド認証端末などをつないでいるなら、ルーターは単なる通信機器ではなく仕事場の境界です。
出典: FBI: End-of-Life Routers / CISA KEV Catalog
国内でもAtermに2026年脆弱性、ただし外部直撃とは限らない

日本の家庭用ルーターも例外ではありません。JVNは2026年、NEC Atermシリーズについて複数の脆弱性を公表しています。
Aterm自身も、サポート終了製品では新しい脆弱性への対応が困難になる場合があるとして、対象製品の買い替えを案内しています。また、Atermの原則的なサポート期間は2025年12月から、販売終了後「約5年」から「約3年」へ変更されました。
ただし、ここでも過剰反応は禁物です。Atermが2026年に公表した主要な問題の中には、家庭内LAN側から不正アクセスされた場合に成立し、インターネット側から直接攻撃されるものではないと明記されたものがあります。
「脆弱性がある」だけで、外部から即侵入されると断定してはいけません。攻撃条件まで見る必要があります。
出典: Aterm サポート期間変更 / Aterm 2026年3月の案内 / JVN#89339669
「脆弱性が出た=即廃棄」でもない
- サポート中・更新あり最新ファームウェアへ更新
- EOLだが既知の問題なし交換計画を立てる
- EOLかつ修正不能・実悪用済み脆弱性あり交換を優先
- 外部管理設定あり設定見直しを急ぐ

サポート中の機種なら、メーカーがファームウェア更新で修正できるケースがあります。脆弱性の公表は「今すぐ捨てろ」という意味ではありません。
逆に、サポート終了機で現在のファームウェアが最新だったとしても、それは「今後も安全」という意味にはなりません。将来見つかる問題に修正版が提供されない可能性があるからです。
判断は次のように分けるとシンプルです。
- サポート中・更新あり:まず最新ファームウェアへ更新
- サポート中・重大な脆弱性あり:メーカー告知の対処を優先
- EOLだが既知の問題なし:すぐ危険と断定しないが、交換計画を立てる
- EOLかつ修正不能・実悪用済み脆弱性あり:交換を優先
- 外部から管理できる設定がある:設定見直しを急ぐ
外部管理をOFFにすればEOLでも使い続けて大丈夫、とも言い切れません。攻撃面は減らせても、修正が止まっている問題そのものは残ります。
出典: Aterm サポート期間 / CISA KEV Catalog
個人事業主の交換判断は5段階で十分
型番
本体ラベルや管理画面で正確に確認
EOL
メーカーのサポート継続有無を確認
ファームウェア
最新版と自動更新の有無を確認
実悪用情報
JVN・CISA KEV・メーカー告知を確認
交換判断
EOLまたは修正不能なら交換を優先

仕事用ルーターなら、購入日を思い出すより次の5つを順番に確認した方が早いです。
1. 型番を確認する — 本体ラベルや管理画面から正確な型番を確認します。
2. メーカーのサポート/EOLを確認する — 「まだ動く」ではなく、今後も修正が提供される機種かを見ます。
3. 最新ファームウェアが適用できるか確認する — 自動更新の有無も確認します。
4. JVN・CISA KEV・メーカー告知を確認する — 型番単位で重大性や実悪用の有無を見ます。
5. EOLまたは修正不能なら交換を優先する — とくに業務PCやNASと同じLANで使っている場合は、故障まで使い切る発想から離れた方が安全です。
この5項目なら、「3年経ったから交換」「5年以内だから大丈夫」といった一律ルールより、実際のリスクに近い判断ができます。
交換するなら「回線」と「ルーター」を混同しない

Wi-Fiルーターを交換することと、光回線・ホームルーター・WiMAXなど回線サービスそのものを乗り換えることは別です。
固定回線に市販Wi-Fiルーターをつないでいるなら、セキュリティ上の寿命が来た機器だけを交換できる場合があります。一方、ホームルーター型のサービスでは通信回線と端末が一体なので、更新方法や交換条件はサービスごとに違います。
もし「そもそも今の回線構成ごと見直したい」という話なら、セキュリティ対策と回線選びを分けて考える方が整理しやすいです。
また、接続が切れる・遅いといった症状が主な悩みなら、寿命ではなく電波・設置・回線側の切り分けが先です。
Noa's View
ルーターは、壊れるまで使える家電のように見えます。
でも仕事で使うなら、「まだ動く」と「まだ守られている」は別です。
AIによって攻撃側の探索能力が上がっても、すべての古い機器が一夜で危険になるわけではありません。だからこそ、年数ではなくサポートの有無を見る。この地味な確認が一番強い。









